3. 不協和音の扱い
不協和音そのものは禁止ではありません。対位法はむしろ、不協和音が生み出し解決する緊張で駆動します。検証器が退けるのは管理されていない不協和です。この章では合法的な型を、不協和を置ける場所を決める拍節の規則から、不協和を意図的に演出する掛留まで、順にカタログ化します。
エンジンは三つの問いを区別します。
- その縦の音程は不協和か?(第1章の分類)
- その音は、構造的に強い位置で和声音か?
- 安定でないなら、準備と解決はあるか?
和声音と非和声音
和声音は、その場の和音に属する音です。ハ長調の主和音なら C・E・G が和声音です。D や F も音楽的でありえますが、安定音のあいだを順次でつなぐ「経過」のような機能が必要になります。これが非和声音(NCT)です。
強拍は和声音を要求する
小節頭は構造の支点です。エンジンにとっての「強拍」の定義はそれがすべてで、start_tick % ticks_per_bar == 0 を満たす位置に過ぎません(入門)。エンジンは、そこに置かれる生成音がその場の三和音——和音の根音・第3音・第5音(入門)——に属すること、そして強拍で同時に鳴る声部ペアが協和音程を作ることを要求します。
| ルール | 発火条件 |
|---|---|
strong_beat_dissonance | Compose 由来の音が小節の第1拍で、その時点の和音の根音・第3音・第5音のいずれでもない。 |
vertical_dissonance | 強拍で同時に鳴る声部ペアが、協和集合 {0, 3, 4, 5, 7, 8, 9} の外の音程を作る。両 Material のペアは免除。指摘は Compose 側へ。 |
弱拍は「読める」不協和を許す
小節頭と小節頭のあいだでは、旋律線が機能を聴き取らせる限り——つまり順次進行(隣のスケール音への移動、2半音以内)で入って順次で出る限り——不協和な非和声音が許されます。古典的な型は二つです。
経過音は、3度離れた二つの和声音のすき間を順次で埋めます。刺繍音は、和声音から一歩離れてすぐ戻ります。どちらも安定した枠の装飾として聞こえます。
バッハはこの型を16分音符の速度で実行します。ハ長調フーガ(平均律 I 巻)の第2小節では、走る線が上の応唱と2度衝突します——4度、つづいて7度。そしてどちらの衝突も契約を満たしています。
同じ不協和でも、その枠がなければ失敗します。
| ルール | 発火条件 |
|---|---|
unprepared_dissonance | 弱拍の非和声音への接近または離脱が2半音を超える——経過音でも刺繍音でもない。Compose 由来の音のみ。声部の最初と最後の音は免除——片側に隣の音が存在せず、「順次で入ったか」を評価しようがないからです。 |
掛留——予約された不協和
掛留は調性音楽で最も意図的な不協和です。三段階の型で、エンジンの素材モデルはこれを明示的に宣言します。
掛留をひとことで
安全だった音が保持され、その下で和声が変わって一時的な緊張が生まれ、順次進行で解決する。遅延した更新と考えてください。古い値が1拍だけ残り、それから追いつくのです。
- 準備 — その音が協和音程として鳴る。
- 掛留 — 相手声部が動くあいだ、その音がタイ(同じ高さの音を弧線でつなぎ、境界をまたいで一つの音として鳴らし続ける記法)で保持され、宣言された不協和が生まれる。
- 解決 — 保持されていた声部が、定められた方向へ全音階の一歩だけ動く。
エンジンは古典的な4種類の型を扱います。名前は「バス上の不協和音程→解決後の音程」です。
連鎖させると、掛留は単発の出来事ではなくテクスチュアになります。各解決音が、そのまま次の準備音を兼ねるのです。
バッハが平均律 I 巻を閉じるロ短調プレリュードは、まさにこのテクスチュアで幕を開けます——ただし掛留は、歩くバスの上で二つの声部のあいだを行き来します。
suspension_preparation と suspension_resolution_step_down が強制する型そのものです。ソプラノ最後の D もまた第3小節へタイでつながれ、そこで次の7度を作ります。連鎖はただ続いていくのです。| 型 | 不協和 → 解決 | 方向 | よく現れる場所 |
|---|---|---|---|
| 4-3 | バス上の4度 → 3度 | 下行 | 終止 |
| 7-6 | 7度 → 6度 | 下行 | ゼクエンツの連鎖(いわゆる 7-6 連鎖) |
| 9-8 | 9度 → オクターヴ | 下行 | 落ち着く場面。完全音程への解決なので収束感が強い |
| 2-3 | 2度(バスの掛留)→ 3度 | 上行 | バス掛留。エンジンは上行の一歩を検証する |
検証器はこの章をどう見るか
| ルール | FailKind | 検査内容 |
|---|---|---|
strong_beat_dissonance | MusicalFail | 小節頭のピッチクラスがその場の三和音に属する。Compose 音のみ。 |
vertical_dissonance | MusicalFail | 強拍の同時音程が協和である。両 Material は免除。 |
unprepared_dissonance | MusicalFail | 弱拍の非和声音は順次(2半音以内)で出入りする。 |
suspension_preparation | MusicalFail | 準備音が最低声部に対して協和で、同じ音高のまま掛留へタイでつながる。 |
suspension_resolution_step_down | MusicalFail | 解決は 1〜2 半音の一歩。方向は型ごとに固定——4-3 / 7-6 / 9-8 は下行、2-3 は上行。 |
suspension_seventh_sixth | MusicalFail | 宣言された 7-6 型が、最低声部の上に本物の7度を作り、本物の6度へ解決する(プロビナンスビットで確認するため、掛留キャリアが実際に出荷されていない場面では不発)。 |
第4章 旋律の書法へ進んでください。